ビジョン
ムーアの法則の限界
集積回路(IC)は、数100億個の素子を全長数kmの配線で接続できます。ところが、ICの成長を支えてきたムーアの法則が限界を迎えようとしています。チップ内での集積のみに頼ることができなくなった現在においては、一段と画期的な接続問題の解が求められています[1]。
近接場結合集積技術で三次元集積
私の提案は、チップやモジュールの接続を機械式(配線・半田・コネクタ)から電子式(近接場結合)に代えることです。磁界結合を用いたチップ間無線通信のThruChip Interface (TCI) を考案しました。TCIを用いて、システムLSIとメモリLSIを3次元に積層集積できます。また、電磁界結合を用いた非接触コネクタのTransmission Line Coupler (TLC)を考案しました。TLCを用いて、ストレージやセンサのモジュールをLEGOブロックのように実装できます。目標は、2015年現在よりも32倍高速な512GB/sの積層DRAMを2017年までに実現し、10倍電力効率の高い100GFLOPS/Wのコンピュータを2019年までに実現することです[2]。
IC-Xで未来を創造
2025年になると、チップの集積度はヒトの細胞の数を超えます。ICは、私たちの想像を超えた発展と変革を社会にもたらすでしょう。課題解決に加えて未来創造が重要になります。私たちは、ICと他の学問・技術を融合させることで(IC-X;Xは情報科学、生命科学、ナノテクなど)創出し得る未来社会の夢を描きます。たとえば、1cm3のモジュール型センサノードを用いてどのようなInternet of Things (IoT)を創出できるか、あるいはDeep LearningやSiCを用いて自動運転や健康管理システムを創出できるかを研究しています。
- [1] ICの物語(『パリティ』・丸善2015) 本文を読む
- [2] JST ACCELプロジェクト ACCEL SITE